スマホの画面をスクロールしながら、
自分でも驚くほど、じっくりとプロフィールを見ていた。
顔写真だけじゃ決められない。
趣味、仕事、休日の過ごし方、文章の言い回し、そして「いいね」の数まで――
まるで面接官のように、チェック項目が増えていく。
本気で会いたいと思うとき、見る目が変わる。
以前は「なんとなくいいかも」で軽くマッチしてた。
でも今回は違った。
ちゃんとした出会いをしたいと思った瞬間、
プロフィールの一言一句に、つい目が止まるようになった。
「土日は家でゆっくりしてます」
→ インドア?相性良さそう?
「旅行が好きで、温泉によく行きます」
→ 話し合うかも。でも、どこまで本気?
どの言葉にも、少しずつ自分の理想を重ねて見てしまう。
写真よりも、文章に惹かれた。
正直、写真は普通だった。
派手さも、加工もない。
でも、文章に“温度”があった。
「最近、読んだ本の一節に背中を押されました」
とか、
「仕事は忙しいけど、誰かと一緒に笑える時間があれば嬉しいです」
とか。
作っていない感じがして、すごく自然だった。
いいねを送るまでに、30分以上かかった。
指は何度も止まり、迷って、閉じて、また開いた。
「こういう人、他の人にも人気あるだろうな」
「そもそも自分なんか、相手にされるかな」
そんなことを考えてる時点で、もう気持ちは決まっていたのかもしれない。
そっと、いいねを押した。
画面には「マッチング待ち」とだけ表示された。
出会いって、実は“プロフィール”から始まっている。
顔写真でも、条件でもない。
文章から滲み出る空気感や、言葉の選び方に、
その人の「らしさ」が見える。
「プロフィールを吟味した」というよりは、
たぶん、「その人の人柄を、少しだけ信じてみた」
っていう感じに近い。