「ねえ、今度紹介したい人がいるんだけど」
とある金曜の夜、久しぶりに会った高校の友人が、そんなことを言い出した。
紹介って、アプリでも合コンでもなく、
「知ってる人からのご縁」って、ちょっとだけ緊張する。
「同級生」って、なんだか曖昧な距離感。
その人は友人の中学の同級生らしい。
「男としてちゃんとしてるけど、ちょっと不器用なタイプ」って言われた。
年齢も近い。
結婚はしてないけど、彼女もいない。
趣味は登山とサウナと映画。
プロフィールを聞いているだけなら、
悪くない、というか、むしろいい。
でも、私は紹介って少し苦手だった。
期待しすぎて空振りするのも、
期待しなさすぎて失礼になるのも、どっちも嫌だから。
初対面、カフェで会ってみた。
紹介というより“ゆるい面談”のような空気。
場所は友人も交えての3人でのカフェ。
彼は、最初はちょっと緊張しているように見えたけど、
質問には丁寧に、まっすぐ目を見て答えてくれた。
「映画、好きなんですね」
「登山って、どこまで行くんですか?」
なんて他愛のない会話をしながら、
1時間が過ぎる頃には、ちょっとずつ自然な笑顔になっていた。
特別じゃない。でも、安心感があった。
恋のドキドキとはちょっと違う。
でも、穏やかでちゃんとした言葉と、
話すときの真面目な眼差しに、
「ちゃんと生きてる人なんだな」って感じがした。
友人がその後に席を外したとき、
彼が一言だけこう言った。
「なんか…こういうのって緊張しますね。でも、今日会えてよかったです」
たったそれだけの言葉なのに、
なぜか心がふっとほどけた気がした。
その後、何度かやりとりをしてる。
LINEを交換して、
1日おきくらいでやりとりが続いている。
派手なメッセージではないけれど、
朝に「おはようございます」って来たり、
夜に「今日もお疲れさまでした」って送ってきてくれるその感じが、
どこか、心にやさしい。
恋が始まるかどうかは、まだわからない。
でも、「ちゃんとした人とちゃんと出会った」ことが、
今の自分にはすごく意味のあることだった。
アプリじゃない。
偶然でもない。
信頼できる人を介して、
ちゃんと紹介されて、
ちゃんと相手を知ろうとする出会い。
不器用でも、こういう形がいいのかもしれない。
まとめ:紹介って、意外と悪くない。
ドキドキも、駆け引きもないけど、
最初から“素”で会える出会いは、思ったより安心できる。
派手じゃなくても、
確実に進んでいける関係って、
大人になってからの恋には、ちょうどいい。