婚活アプリでやり取りして、やっと会えることになったある日。
相手は30代半ばの女性。LINEではやや控えめで、でも文章にちゃんと気遣いがある感じ。
「お酒は弱いけど、居酒屋の雰囲気好きなんです」と言っていた。
待ち合わせは、駅近の居酒屋チェーン。
「カジュアルな方が気楽かな」と思って選んだ場所だった。
会った第一印象は、悪くなかった。むしろ、普通に良かった。
服装も清楚で、笑顔も柔らかい。
会話もぎこちなさはあるものの、沈黙になることもなく。
「なんだ、けっこういい人そうじゃん」って内心ほっとしてた。
問題は、注文のあとに突然やってきた。
メニューを開いて、彼女が頼んだのはサラダと梅酒。
こっちも適当に唐揚げとハイボールを頼んで、
「じゃあ乾杯しましょうか」って言おうとした瞬間。
彼女が「ちょっと電話してきますね」と席を立った。
スマホを持って、入口の方へ向かっていく。
…3分
…5分
…10分
戻ってこない。
「…まさか」と思って探しに行ったけど、もういなかった。
店員さんに「あの女性、お連れの方ですよね?」と聞かれ、
「え?外にいませんでしたか?」と答えるしかなかった。
もちろん、LINEは既読スルー。
その日以降、一切返信はなかった。
置き去りの唐揚げと、しぼんだ気持ち。
…なんだったんだ、あれは。
普通に会話してたし、無礼なことは言ってない。
食事の前に逃げるって、どういう心理?
食べられなかった唐揚げが、余計に切なかった。
思い返すと、伏線はあったかもしれない。
・会ってすぐに「お店、意外と明るいですね」って言われた
・メニューを見てるとき、少しぼーっとしてた
・料理を注文した直後から、急に落ち着きがなかった
きっと彼女の中で、「何か違う」と感じるものがあったんだと思う。
でもそれを言葉にせず、逃げるように去ってしまうのは、
さすがにきつかった。
「逃げられた」経験は、思ったよりダメージが大きい。
婚活って、お互いに正直でいることが前提だと思ってた。
「違うな」と思ったなら、それを伝えるか、せめて最後まで場に残ってほしかった。
逃げられると、自分が“人として否定された”ような感覚になる。
でも、ひとつ分かった。
「ちゃんと向き合ってくれる人じゃないと、無理だ」って。
表面的なやり取りじゃなく、
違和感があるなら正直に言い合える相手じゃないと、
この先の関係は築けない。
逃げた彼女を責める気はないけど、
こっちは、また一歩前に進むしかない。